天下堂

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影郎最新作「VERONICA」2012.09.23

影郎デザインワークス最新作 モデル/VERONICA 全4色入荷いたしました。
この「VERONICA(ベロニカ)」が生まれるきっかけになったエピソードが面白かったので
アイウェアデザイナー影郎氏ご本人のブログよりご紹介させていただきたいと思います。

話は2年ほど前にさかのぼる。
名古屋駅の新幹線ホーム。少し早く着きすぎてしまい指定ののぞみ号の到着時間まで私はホーム中ほどにある喫煙スペースでたばこを吸って時間をつぶしていた。
自由席であれば来た新幹線に乗ればいいのだが指定席券を買ってあったのでそれが来るまで2~3本の新幹線を見送らなければならなかった。
その時だ。ホームに到着したのぞみ号のグリーン車のドアから恰幅のよい年配男性に続いて恐ろしくきれいな女性が降りてきたんだ。親子ほどの歳の差があるが親子ではないのは着ている服や態度で解る。おそらく年配男性は大手企業の社長さんであとに続く綺麗な女性はその社長秘書さんなんだろう。黒くて長い髪、控え目なメイク、抜群のスタイルにスーツ、華奢な腕にビジネス用バック、、、、
ただそれだけでいちいち注目するほど私はスケベではないぞ。私が注目したのはそんな彼女のさまざまな美しさをしっかりひとつにまとめる彼女のメガネにあったのだ。

こういう仕事をしていると遠目にメガネを見てもそのメガネの厚みぐらいは大体想像がつく。そのメガネはプラスチックフレームながらも恐ろしく薄くて細い。おそらく厚みは3mmぐらいしかないだろう。大人びたスタイルなのにどこか幼さが残る彼女の顔にこのか細いプラスチックフレームはピッタンコにマッチしたんだ。レンズのシェイプはセクシーながらもデザインは何一つ面白くないデザインなのにただ細くて薄いというだけであんなにも女性の美しさを引き出してしまうから不思議。もし彼女が今流行の太いフレームを掛けていたとしたら私はおそらく彼女の存在には気付かず景色の一部分としてしか映らなかっただろう。

たまたま社長さんが立ち止って携帯電話を取り出したので私は意を決してその女性に近づきそのメガネを間近で見に行ったのだ。というのも3mの薄さであればアセテート製ならばすぐに折れて壊れる。素材の固いセルロイド製ならば壊れないわけではないがアセテートよりはまだマシ。しかしこんな細いセルロイドが作れる日本のメーカーはマコト眼鏡さんの「歩」(あゆみ)というブランドしか知らないが「歩」のカタログにこういうデザインはなかったような気がする。商売柄彼女のメガネの素材やどこのメーカーかまで知りたくなってしまったんだ。

するとだ!2mぐらいの距離まで近づいたときにすぐに解った。
「これはオモチャじゃないか!」
メガネ屋さんで売っているメガネではなく女の子向けの雑貨屋で1千円ほどで売っている雑貨メガネだったのだ。

2mぐらい近づけばその安っぽさに気付くがそれ以上の距離でこの細いフレームを見るととても高級感のあるメガネに見えたから不思議。あまりにも面白くないデザインなので社長秘書という職業には持って来いなのかもしれないが、薄くて細いだけでなくもう少しフォルムに遊びがあれば応用範囲は広がる。この薄さでちゃんとした素材のメガネが作れるならば・・・・

影郎さんの文章は読みやすくて面白いです。小説も一つの作品として書いて欲しいなと思います。(笑)
では、全4色のカラーバリエーションです。

カラー/ブラック

カラー/ダークブラウン

カラー/マーブルグレー

カラー/マーブルブラウンマット

極薄(一番薄い部分で3mm)のセルロイドで作られたプラスチックフレームなのに華奢な仕上がりです。
身に着けたときに過度な存在感を主張することもなく、品の良い仕上がりとなっています。
良い例えかは分かりませんが、アクセサリーやメイクというより香水のような存在感だと思います。
視覚には入ってこないが、すれ違った時に好印象を与える・・・そんな感じでしょうか?

影郎デザインワークス/JAPAN  モデル/VERONICA  マテリアル/セルロイド